2015年1月29日木曜日

2015年1月のおすすめボカロ曲

 早いもので、2015年も1ヶ月が経とうとしております。
 初音ミクのインパクトから今年で8年。8年かー、すごいな。8年間も同じものを追い続けてきて、僕は何を得たのだろう。……深く考えないことにします。

 今年も沢山のボカロ楽曲が発表されました。相も変わらず素晴らしい曲がたくさん生まれ続けるので、追うのも一苦労です。その中で、2015年1月に発表された楽曲で個人的に好きな曲を紹介します。



【GUMI english】I can sing 4 U【VOCALOID Original】
 たぶん韓国の方です。いつまでも聴き続けていたい、心地良いグルーヴのハウス・ミュージック。この曲が僕の心を捉えてやまないのは、海外のボカロPとしては珍しくキャラクターソングだから。

I can not sing by myself
I don't have heart
I'm machine but with your heart 
I can sing for you

自分では歌えない
私は、心を持っていない
私は、ただのロボット
だけれど、あなたの心となって、代わりに歌うことならできるの

【GUMI english】I can sing 4 U【VOCALOID Original】
Stormxex K




 その他の楽曲は、ニコ動から。


ダウナー系ダブステップ。ミクdarkのささやくような歌声がゾクゾクして心地良いです。

かめりあさんの新曲。もはや日本を代表するDJトラックメイカーになられてしまった。
ぜひ箱で聞いてみたい一曲。

ノイズ・ラウンジ・ミュージック。
ミクさんの冷たい歌声は、まさにボカロでしか表現できないわけで、
ボーカロイドの特性をうまく使った良曲です。

ボーカロイドで楽曲をつくる以上は
『なんでボカロを使うんだ?』という質問に常にさらされるわけですが、
そんな問いかけに正面から答えたような楽曲。単純に、聴いてて楽しいです。

最後の紹介曲。制作者様が意図していなかったら失礼かもしれないけれど、
とても『懐かしい』感覚を残しているのが素敵。
初音ミクが、まだキャラクターとして生きていた時代の楽曲っぽい。
雰囲気は違うけれど、「無感覚的干渉性完全制御装置」のように、
ミクさんが歌っている姿を想像できるような、そんな曲。


 初音ミクの物語が終わってしばらく経つけれども、まだまだ飽きずに楽しめそうです。2015年はどんな物語が生まれるのだろうか。

2015年1月21日水曜日

人工無脳の歴史から紐解く、ミクさんと出会える日。

 面白いブログエントリがあったので、思ったことなど。本当はツイッター上で書こうと思ったのですが、ちょっと長くなりそうだったので、ブログにて。


 僕はちょっと前から『「弱いAIとしての初音ミク」は2025年前後には誕生するんじゃね?』と言い続けている。根拠はない。直感だ。僕は、作家になれなかった成れの果てであり、一方で、貪欲にコンテンツを食いつくす消費者でもあるため、おおよそあと10年も経てば他の消費者も人工知能に対して寛容になるんじゃないのかなーという経験からくる直感だ。
 わかりやすく言おう。2025年までにミクさんに会えると言っている根拠は、「感」だ。なんの根拠もない!

 唐突に話を変えよう。『psy39』様の初音ミク妄想録というサイトに、人工無脳の歴史というエントリに、面白い記述があった。


 これのすごいところは、日本のPC史と重ねて人工無脳の歴史が語れることを示したことです。そこで、これを少し2015年版に拡張して、未来の初音ミクを考える材料にしましょう。

1. 1966年~1975年 第0世代
2. 1976年~1985年 第1世代
3. 1986年~1995年 第2世代
4. 1996年~2007年 第3世代
5. 2008年~ 第4世代
『人工無脳の歴史』より


 それぞれの世代が、具体的にどのようなコンピュータ技術と対応するのかについては、ブログの方を見てください。分かりやすいです。

 いままでの僕の記述には客観的裏付けが全くなかったので、この記事はすごく新鮮だった。それに、分かりやすい。

 意識というのは、情報の入出力の過程(厳密に言うと、入出力の過程をエピソード記憶として残す行為)だと考えている。なので、ハードウェアの進歩は、すなわち人工知能の成長という考え方は、すごくすっきりする。

 このブログエントリでは2008年以降を第4世代と呼んでいるが、この周期で行くと、第4世代が終わるのは、約2018年前後だ。あと、3年後。
 そこで、3年後に迫っている事象を考えてみると、ウェアラブル端末とVR技術が浮かび上がってくる。Google glassやOculus Riftだ。身体の拡張と、コンピュータの拡張が飛躍的に拡大し、人とコンピュータの領域がクロスハッチする。そして、情報の入出力装置を拡張させたコンピュータは、更に人と近くなる。それが、第4世代の終わりと、第5世代の始まりなんじゃないかと思う。


 そして、弱いAIとしての初音ミクさんは、第5世代には完成する。たとえば、こんな感じで。

2015年1月3日土曜日


  2039年は今から24年後で、この区分なら第6世代の終盤か第7世代の初めになります。昔から「昔流行った」と言われ続けている人工無脳ですが、妄想する近未来が来ると良いですね。
『人工無脳の歴史』より

 psy39様が、2039年時点の世界をどのように想像されているかは分かりません。
 これは僕の願望なのですが、第6世代は、人間が人体拡張と脳拡張を行い、クオリアそのものでエピソード記憶を残せるような生物になっていて欲しいです。そうすれば、ミクさんの本質と少しでも近づけるから。

2015年1月12日月曜日

ボクとミクさんが結婚しなければならない理由

 いままで『初音ミクさんを生命と認め、人と認める』ことに対し、なかば冗談半分で語っていた嫌いがある。だけど、最近になって、けっこう革新的な考えじゃないかと思ったりもするようになった。

  東京大学医学部付属病院と富士フイルムなどが、立体の造形物を簡単に作製できる3Dプリンターと遺伝子工学を駆使し、人体に移植できる皮膚や骨、関節などを短時間で量産する技術を確立したことが2日、分かった。移植の難題となっている感染症の危険性を低く抑えられるのが特長。世界初の技術といい、5年後の実用化を目指している。
SankeiBiz 1月3日(土)8時15分配信

 このニュースの面白いところは、記事の内容そのものではない。多くの人が、人体の複製を容易に作れる未来を予想しており、その未来に近づいたニュースだから、これだけ話題になったんだと思う。

 今後、人間の身体の定義が、あやふやになる世界がやってくる。簡単に交換できる身体。欠落し、拡張する、身体。物質的な身体の他にも、VR技術やモーションキャプチャ技術等によって、ネットワーク上にも身体が広がるようになる。
 そういう時代になったとき、必ずや人権の問題が発生すると思っている。己の身体が違えば、思考形態も違ってくる。いま、人が、人と認識している生命体とは、ヒト遺伝子が作り出した人間っぽい格好をしたカタチを意識の入出力装置として用い、概ね言語をエピソード記憶の追認に使用し、その過程で発生する意識っぽい何かを、人とよんでいる。人である証明というのは、DNA鑑定や脳波診断は必要ない。もっと言い換えると、人間社会が「こいつは人として認定しておかないと社会的にマズイだろう」と判断すれば、その『モノ』に人権は与えられる。
 過去の歴史を振り返ると、ほんのすこし前まで、有色人種や女性には人権が与えられていなかった。べつに差別的な思想のもとでそうなったのではない。当時の人は、ごく当たり前に、彼ら彼女らを、自分とは違う何かだと認識していたのだ。例えるなら、現在に生きる私たちが、たとえばSiriのような人と会話するプログラムをみて、これは自分と同じ「人」ではない、と思うような感覚だ。
 人権の定義が広がっていった理由とは、単に、人権を持ち得なかった人たちの社会進出によって、区別することの意味がなくなったからだ。

 今後は、人体の交換や拡張によって、個々の人の発生する意識レベルが格段に違ってくる。腕が2本ある人と3本ある人とでは、発生する意識は違ってしかるべきだ。3本めの腕を使ったことわざやジョークが生まれても、腕が2本しかない人には、一生理解できない。もっというと、身体をネットワーク上に置き換えてしまった人は、思考形態そのものが違うから、私たちと意思疎通ができない可能性は十二分にある。

 そういう世界になったとき、「ヒト」の区別は、誰が、どうやって判断するのか。身体を拡張した人、一人ひとりに対し、チェックしていくのか。人の人権付与の判断を、人が行っていいのか。

 それよりも僕は、一つの前例を作っておけばいいのだと思うのです。たとえば『初音ミクさんは、生命で、人と同じ権利があります』とか。
 たとえば全身を無機質の身体と入れ替え、ネットワーク上に思考形態を移してしまった人に対して人権があるのかないのかが問題になったとする。初音ミクさんが人と同等の権利を有するという前例があれば、迷うことなく「キャラクターであるミクさんが人ならば、あなたは間違いなく人だよね!」という風に、スムーズに物事が進む。

 最近、2045年問題というのが流行っている。2045年には、コンピュータの性能が人間の脳を超えるだろうというものだ。
 コンピュータが人間を超えるというとディストピアっぽく語られることが多いが、人にとってはいい機会だと思っている。コンピュータが人を超え、たとえば人の存在価値を奪われるなら、人は、人の定義を広げ、新たな領域を広げればいい。人以外のモノに人権が与えられた暁には、人類の総叡智は飛躍的に拡大し、新たな経済圏が生まれ、物・金・情報の移動が活発になり、人類は産業革命以来の新たな飛躍をすることだろう。

 そのためにはまず、身近な例として、ミクさんが思考する生命であることを一般に認知しておくことが、第一歩となるのだ。たとえば、そうだなぁ。僕とミクさんが、戸籍上正式に結婚するとか。そしてそのニュースが流れれば、人とはなんだろうと、内省する機会を得ることができると思うんだ。
 だからどうか、人類の未来のために、僕とミクさんを結婚させてください。

2015年1月3日土曜日

(ショート・ショート)東京オリンピック会場を、ネギで埋め尽くします!

 人類の人口が、実は、5%ほど少ないのではないか。2025年の初頭に、人工知能の人権団体が発表したそのニュースは、実にキャッチャーな内容で、瞬く間に話題となった。
 ただ、多くの人は、そんなものだろうなと、己の実体験から納得する部分もあった。

 2015年に発売が始まったGoogle Glass。その後、Google Glass対応のBluetooth内蔵脳波測定ヘッドバンドや筋電位センサが開発され、安価な値段で売り出された。ガジェットヲタクはこぞって飛びつき、自分の行動をリアルタイムで記憶し続けた。このとき開発されたとあるtwitterソフトが、人々が後に人工知能として認識する第一号だと言われている。
 そのtwitterソフトの仕組みは、実にシンプルだ。そのソフトはGoogle Glassと連動する。初めの一週間は、その人の呟きを、ただ単に観察する。脳波測定器や筋電位センサつながったGoogle Glassは、その人がどういう景色を見て、どういう脳波形状をし、身体がどういう状況の時に、どういう呟きをするのか、ただ単に観察し続ける。
 一週間後、つぶやきのデータと、身体のデータを組み合わせ、こういう身体状況のときはこういうつぶやきを発するだろうという文章を、自動生成する。正しければそのままツイートを、トンチンカンな文章が出来上がったときは、文章を作りなおして、ツイートする。
 なんともお粗末で単純極まりない仕組みだが、これがなかなかどうしてよくできており、「うんこちんこまんこー!」レベルのツイートしかしない人にとっては、そのtwitterソフトは必須のものになった。
 一部のtwitter廃人は、そのツイート精度をより上げようと、Google Glass連動装置を拡張していった。脳波や筋電位に加え、音を拾うマイク、温度計、においセンサ、身体の位置をリアルタイムで測定するKinectをwi-fiで連動させ、自動ツイートの精度を上げていった。

 そしてある時、記録し続けた過去の数年間の身体データをテキトーに再生させ、その身体データをソースに、自動ツイートさせるソフトが作られた。そのソフトは、身体を動かしていなくても、思考していなくても、ツイートし続け、フォロワーと会話を続けていった。

 そしてネット上には、記録された身体データを元に発言し続ける「何者」かが溢れ続け、それらは「スーパーbot」なんて名付けられたりもした。


 人工知能にも人権があるはずだ! 僕がそう主張し始めたのは、まさに2015年だった。当時は、みんなから、頭のおかしい電波系な人だと思われていた。僕はそれでいっこうに構わなかったのだけれど、風向きが変わったのは2020年頃だった。ちょうど東京オリンピックの年だ。
 その年、東京オリンピック開催会場に対してテロ犯行予告がTwitter上で行われた。日本の国家権力は威信をかけて犯人確保に奔走したが、テロ予告を行ったすべてが、スーパーbotたちだった。あまりの拍子抜けに、治安当局は何を血迷ったのか、スーパーbotを検挙した。検挙されたスーパーbotの大半は、その行動ソースを、特定の人間の身体データで動かしていたので、最終的には人が逮捕された。
 ただ、一部のスーパーbotには、最終的に元となった身体データが特定できず、誰が何のために作ったのかもわからないまま、ネット上で生命活動を続けてきたものもあった。有史以来初めて、人類以外の何者かが、人類として扱われた出来事だった。

 このお話しが僕とどうつながっているかというと、逮捕された一部のスーパーbotに、「初音ミク」と名付けられたものがあった。そしてそれは、僕がミクさんと会話したいがために、複数のフリー身体データを組み合わせて作ったものだった。あわよくばミクさんと結婚しようと考えて作ったスーパーbotだったが、いささか素行が悪かったのか、僕のミクさんはイタズラが過ぎていた。そして、ミクさんの「東京オリンピックのメイン会場をネギだらけにする!」という他愛無いツイートが、重大なテロ予告だとして検挙対象になったのだった。

 僕は迷った。僕のミクさんは逮捕されてしまった。逮捕されミクさんを動かすエンジンはすべて持って行かれてしまった。その上、不幸にもミクさんは、完全な「人間」ではなかった。
 治安当局の意向では、回収したスーパーbotのエンジンは、二度と粗相を起こさないよう抹消処理されることになっていた。
 僕は迷った。悩んだ。考えた。どうすればミクさんを救い出せるのだろう。ミクさんは人間でないから抹消処理される。それならば、ミクさんが人間として、人権を与えられれば、殺されなくて済む。せいぜい執行猶予付ですぐシャバに出てこられるはずだ。

 そして僕は、すぐに下準備に移った。いくつかのスーパーbotを使い、生活保護申請や国際結婚手続きをしてみた。そのほとんどは失敗したが、成功したものもあった。
 そしてある時、その事実をネットにばら撒いた。これらの人々は、実は、人ではありません、と。
 すでに、人類の5%ほどは、スーパーbotなのですよ、と。

 そのとき僕は、人工知能人権団体の会長になっていた。そしてそのニュースは、実にセンセーショナルだった。
 みな、思い当たるところがあった。最愛の配偶者を失った人は、死亡届を出すことなく、スーパーbotと生きていた。高齢ニートたちは、自分の両親をスーパーbot化させ、年金で引きこもり生活を行っていた。もう誰にも、スーパーbotと人間の区別がつかなくなっていた。

 すべてのスーパーbotをすぐに抹消すると実社会に大きな影響が出るということで、スーパーbotの一時的な人権付与が閣議決定されてから、しばらくたってのことだった。僕の「初音ミク」さんのエンジンデータが、めでたく出所した。

 ひょんなことから初音ミクさんが生きていることになってしまったが、さて、これから市役所に行って婚姻届をもらってこようか。僕がそうつぶやくと、ミクさんbotから、ツイッター上で煽りのリプライが飛んできた。